企業価値を最大化するためのCRE戦略(企業不動産戦略)
CREマネジメント戦略
2015.10.4

CREマネジメント戦略を立案する
不動産は、企業活動から切り離せない資産です。企業は不動産を所有、売却、購入、そして賃貸借と、さまざまな方法で利用していますが、CREマネジメント戦略の推進においては、それらを総合的に、かつ損益計算書に表れる部分だけではなく貸借対照表の観点からも検証することが、重要であると言えます。そのためには、まずは不動産がどういう状態にあるかを可視化する必要があります。
その際に重要なのが耐震補強やアスベスト撤去といったコンプライアンス(法令遵守)、事故防止や災害時の誘導体制など、企業が不動産所有者として全うすべきCSR(社会的責任)の観点です。このために必要となるのは、適切で計画的な管理体制の確立・修繕工事の実施です。適正コストを精査しない安易なコスト削減による管理や修繕は、時に甚大な事故発生につながることは言うにおよばず、将来大規模改修が必要になるなど結果的にはコスト高となります。CSRという社会的側面を重視したCRE戦略は、中長期的に経済的側面においてもメリットを生むことになるのです。
経営資源としての不動産の最適・最有効活用
あらゆる情報を収集・整理し、保有不動産の時価を正確に把握する
不動産の時価を正確に把握するためには、その不動産の特性、収益、権利関係、違法箇所の有無、アスベストや耐震性能のリスクなど、その不動産に関するあらゆる情報を収集し、一元的に整理し把握することが必要です。また、不動産に関する状況は外部要因、内部要因とも、時間の経過とともに刻一刻と変化するので、定期的な見直しが必要です。
保有不動産を俯瞰的に分析し、経営戦略上、保有し続けるべきか否かを見極める
近年、企業が不動産を保有、売却する際の意思決定の明確化、説明責任が求められております。資産価値や収益の大・小、本業への寄与度、使用価値や設備更新による将来のコスト増などを把握・分析したうえで、それぞれの不動産が全体の中でどのような位置づけになるのかを俯瞰的に把握し、経営戦略上、中長期的に保有すべきか手放すべきかを検証することが必要だと考えます。
さまざまな角度からの検証により、保有不動産の潜在価値を引き出す
例えば賃貸不動産においては、マーケットを調査し、現在の賃貸条件が適正か否かを把握することが必要です。また、現在の用途がマーケットに合っていないことにより思ったような収益が上げられていない時には、コンバージョンや建て替えも考えられます。その際どれくらいの収益を生み出せるのかを調査し、事業収支を検証することで、その不動産の潜在価値を計ることが必要です。
自社で使用している場合においては、レイアウトの見直しや拠点の整理・統廃合により新たなスペースを生み出したり、外部に賃貸することにより新たな収益を生み出すことが考えられます。また、現況の建物の容積率をすべて消化しきれていない場合には、建て替えを行うことによって賃貸スペースを生み出すことができます。
トータルライフサイクルコストの適正化を図る
不動産を長期で保有する場合、維持・修繕に膨大な費用がかかり、場合によってはその額は初期投資(設計・建設費)の6倍におよぶと言われています。適正仕様を精査せずに低コストを求めることは問題ですが、過剰な管理や場当たり的な修繕は無駄にコストをかけることになり、トータルライフサイクルコストがさらに膨らむことが往々にして起きています。管理仕様やコストを精査することにより日々のランニングコストを適正化し、また修繕計画に則った工事を推進することで、膨らみがちなトータルライフサイクルコストの適正化が可能となります。
戦略的な売却活動により有利な条件を引き出す
保有不動産を売却する場合においても、さまざまな選択肢が考えられます。自社で使用している不動産を売却する場合は、売却後も継続して賃借して使用するか(セールス&リースバック)、ほかの場所に移転するかの選択肢がありますし、売却方法においても、所有権の単純売却だけでなく、証券化スキームを利用する方法があります。また、物件特性に応じて売却相手や売却方法を戦略的に選択することにより、より有利な売却条件を引き出すことが可能となります。
企業の社会的責任(CSR)における不動産リスク
災害や事故によって企業が制裁を受ける事例はたくさんある
企業が何らかの形で保有または利用している不動産には、さまざまなリスクが存在します。その中でも重要でありながら軽視されてしまいがちなのが、災害や事故に関するリスクです。残念なことに、企業が起こした事故事例を新聞などで目にすることは多く、時には人命に関わるような痛ましい事故も見られます。もちろん、刑事的制裁・社会的制裁などに至ることはいうまでもありませんが、企業としては絶対に起こしてはならないことで、そのリスクマネジメントは極めて重要なテーマであると言えます。
管理不行届き、行き過ぎたコストダウンによる事故
事故の背景を見ると、不動産の管理や修繕が十分でなかったケースが多く見受けられ、またその原因が行き過ぎたコスト削減による結果であることも少なくありません。「定期点検を行っていない」「定期点検は行われていたが安全対策も含め全面的に業者任せ」等々、法令違反状態の放置は言うにおよびませんが、業者任せも、事が起こった時には「任せていた」ではすまされません。また、そういった実態を企業側が知らなかったということもよくあるのではないでしょうか?
震災は避けられない。「減災」を考える
避けられないリスクと位置づけられる震災ですが、これも日頃のマネジメントがものを言う部分です。いわゆる既存不適格建物ということで耐震措置を施していないということは、法的に問題がなくともCSRという観点においては許されるものではありません。避けられないリスクだからこそ、災害の影響を最小限に食い止める「減災」が災害リスクマネジメントの根本になるのです。
資産をしっかり監視すること、そして適切な管理・維持・保全を行うこと
CREにおけるCSRの実践のためには、まず資産をしっかり監視する仕組みをつくることが大切です。適切な建物管理や修繕を「人任せにせず」「きちんとコストをかけて」行うこと、そして個々の不動産ごとにカルテをつくって常に監視すること、これがザイマックスの考えるCREマネジメントの肝です。
CSRの指向は、経済的側面における資産の価値向上にもつながる
建物を適切に管理・維持・保全することは、災害や事故による不動産リスクを低減するにとどまらず、その不動産の利用者における評価を向上させることにつながります。利用者が顧客であれば、収益の向上につながるであろうことは言うまでもありません。 CREにおけるCSRの指向は、実は不動産そのものの価値向上にも大きく寄与することなのです。