企業価値を最大化するためのCRE戦略(企業不動産戦略)
CREとは?
2016.8.3
CREとは「企業不動産」を意味する「Corporate Real Estate」の略で、企業が事業に用するために保有・利用している不動産を指します。本社ビルや営業所、賃貸ビル、工場、社宅、研修施設、物流倉庫、遊休地等が該当します。このコラムでは、CRE基礎編としてわかりやすく概要を解説します。
[1]CREが注目される理由
現在、企業経営におけるCREに高い関心が集まるようになった背景として、大きく3点が挙げられます。
①経営資源の見直し
難しい経済状況が続く中、多くの企業ではあらゆる経営資源を見直すことが検討項目となっており、CREも対象として例外ではありません。土地・建物をただ使用するだけでなく有効活用し活かすこと、つまり、不動産価値の向上。それは企業価値に比例するものであり、効率的なCRE戦略の実践は企業の財務数値状況に直接的に影響するのです。
②IFRS(国際会計基準)への移行問題
減損会計や賃貸等不動産の時価開示をはじめとした会計制度が改正されつつあり、対応の必要性が高まっています。株主など利害関係者(ステークホルダー)への詳しい説明を行う責任もより重視される方向へ進んでいます。
③環境や社会への配慮
環境問題が深刻化する現代。昔に比べると最近では環境汚染についての認識が海外から日本にも広がり、CO2排出量削減や建築物の省エネなど、不動産のエネルギー数値管理をはじめとした環境性向上が企業やCREの新たな評価軸として注目される傾向にあります。
これらの変動をマイナスではなくCRE戦略に取り組む良いきっかけととらえて業績回復への足がかりとして乗り出すことも可能なのです。
[2]CREがなかなか進まないのは?
CREの概念が生まれたアメリカの場合、CREの管理や市況情報の収集機能を目的とした専門部署や組織を社内に置くのが主流であり、定着しています。しかし、日本では弊社のような不動産総合サービス会社や不動産開発業者など総合的サービスを提供する特定の会社にサポートを依頼するケースが多い状況です。それは、CREに関する業務は不動産戦略の立案・実施からその他日常の管理業務まで範囲が多岐にわたるからです。
法律や会計、コンプライアンスから日常修繕まで、ある程度の技術や専門知識を要するので、様々な部署が関係することになります。しかし、不動産に関連する情報を一元的に整理・管理し統括できる部署やプロジェクトチームを社 内に設置している企業は国内ではごく一部に限られているのが現状です。
また、不動産は本業ではないため、専門的なノウハウや知識を持った担い手を充分に確保・採用するのができず、最終的に不動産利用に係るコストをシビアに精査し、トラブルの把握、リスク管理の実現が得られ難いケースも見られます。
基本的な流れは、以下の通りです。
全ての不動産を把握すべく棚おろし、調査、鑑定
↓
各不動産ごとにCRE戦略や対策方法をプランニング
↓
具体的な戦略提案
↓
計画の実践、実現
↓
結果検証
このページで登場する「CRE」用語
- J-REIT
- 米国で生まれた「Real Estate Investment Trust」に、JAPANの頭文字「J」をつけた日本版不動産投資信託。投資家から資金を収集し、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産を購入・運用し、賃料などの収益を投資家に分配するという仕組みを持っている。
- 温対法
- 1998年に地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)が施行された。温室効果ガスを一定以上排出する事業者単位で排出量の値を算定して国に報告、示すことを義務付けている。