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東日本大震災の際に困った首都圏オフィスの事例22
BCPって常識?
コラム
首都直下地震が起きたら?

日本は地震の活動期に入っている
今後30年以内にマグニチュード7レベルの首都直下地震の発生確率は70%。最近ニュースなどで報じられることも多いので、耳にしたことがあるのではないでしょうか。交通事故で負傷する確率が24%、同原因で死亡する確率が0.2%であることと比べても、地震が起こる確率の高さが分かります【図表1】。
しかも、東日本大震災の後、体に感じない程度の地震は、数え切れないほど増えていますから、いずれこの70%という確率も見直されることになるでしょう。

政府の試算によると、首都直下地震が起きた時の被害想定額は112兆円。東日本大震災による経済被害が17兆円ですから、それと比べても被害の大きさが想像できます。そして112兆円の被害額のうち、ほぼ半分は建物倒壊と、建物が火事で焼失する被害金額です。
東京都はビルの耐震化を進めている
東日本大震災では、都内でも震度5強を記録しましたが、1981年5月以前の「旧耐震基準」で建てられたビルでは、これまで経験したことのないほど激しく揺れたり、階段室周りなどを中心に多数の「クラック」が発生したりしました。震災リスクに対する不安が急激に増大しています。
そこで東京都は特定緊急輸送道路*に指定されている都内の主要通り沿いに、1981年以前の旧耐震基準で建てられ、倒壊すれば道路をふさぐ恐れのあるビルに耐震診断を義務付けました。2012年4月から適用開始となります。耐震診断で「問題あり」と判定されたビルのオーナーは、テナント各社に速やかにその事実を伝えなければなりません。今後、そういった取り組みが始まるのだということを覚えておいてください。
*特定緊急輸送道路とは・・・阪神淡路大震災での教訓を踏まえ、地震直後から発生する緊急輸送を円滑に行うため、高速自動車国道、一般国道及びこれらを連絡する幹線道路と知事が指定する防災拠点を相互に連絡する道路を「緊急輸送道路」といい、なかでも特に沿道建築物の耐震化を図る必要がある道路を東京都では「特定緊急輸送道路」として指定しています。
会社にとどまるための準備はできていますか?
首都直下地震が起きた場合、特に問題になるのが帰宅困難者対策です。今回の震災でも、東京・横浜を中心に帰宅困難者が約260万人発生しましたが、首都直下地震になると今回の2倍以上の約650万人発生するそうです。すごい数字ですが、これでも見通しは少々甘いかもしれないとも言われています。無理して帰宅を急いでも、混乱に巻き込まれるだけですから、社員は会社にとどまり、推移を見守るのが原則です。そのためにも各企業は、社員一人ひとりに防災キットを用意したり、避難経路の確認、また一定期間、一定規模の人がとどまれるための備蓄品等の準備をしておくことが望ましいと言えます。
被害を最小化する「減災」の意識が重要
自然災害である地震は防止・回避ができません。地震が起きたら家具が転倒し、建物が倒壊し、火災が発生してしまうのです。そこで災害を防ぐ「防災」措置ではなく、その被害規模を最小限にすることを目指す「減災」の意識が重要となります。家具・什器の固定化、建物の耐震化、不燃化を図る。そのうえで地震がきたときの避難方法や復旧方法を策定しておくという考え方が大事なのです。
その考え方をベースに具体的な対策を記したものが「事業継続計画(BCP)」です。アメリカの9.11のテロの際に、このBCPがあった企業とそうでない企業では、事業継続という観点で雲泥の差があったことから、危機管理手法として浸透してきました。そして今回の震災をきっかけに、日本企業にも求められる時代になってきているのです。