1人あたり約4坪?
業種によるオフィス面積の違い

1人あたりのオフィス面積はどのくらいなのか、また他社はどのくらいの広さなのかと気になる担当者も多いと思います。今回は、ザイマックス不動産総合研究所が独自に調査した結果から見えてくるオフィス事情をご紹介します。

オフィス1人あたりの面積は?

自社の1人あたりのオフィス面積がどのくらいなのかを正確に把握している企業はあまり多くありません。実感値としては2~3坪程度と言われていますが、数値の目安となるものは、広く知られていないのが現状です。

そこでザイマックス不動産総合研究所では、東京23区に所在するオフィスビルに入居するテナント企業を対象に、賃借面積と利用人数について調査しました。
それによると、1人あたりのオフィス面積おおよそ4坪(中央値)という結果でした。これは約8畳分のスペースを1人で利用していることになり、感覚値と比較してもかなり広いと感じる数字かもしれません。

図1 1人あたりオフィス面積の推移

図1 1人あたりオフィス面積の推移(2009~2012年、東京23区)

※今回の数字は通常の執務スペースのほか、会議室や受付、場合によってはトイレ・給湯室などの賃借面積を対象としています。そのため、1人あたりのデスク周りの感覚値よりも広く感じる場合があるかもしれません。

4坪を検証!数字のウラから理由を探る

果たして本当に4坪もあるのでしょうか。
2012年における1人あたりのオフィス面積を分布したものが図2です。縦軸にテナント数、横軸に1人あたりの平均面積(面積÷人数)をプロットしたこのグラフから、テナントが約2~4坪に集中していることが分かります。これは実感値2~3坪と一致します。

その一方で約7坪以上とオフィスを広く利用しているテナント企業が1割程度あります。約7坪以上の企業が多い理由としては、東京都に本社機能が集中していることが挙げられます。接客スペースや広い会議室、膨大な文書を管理するためのスペースなど広々としたつくりになっている場合が多いため、1人あたりのオフィス面積が約7坪以上となる企業が1割程度あるのです。

こうした企業が、全体の中央値を約4坪に引き上げる要因となっています。では、1人あたりのオフィス面積が広く分散している要因はどこにあるのでしょうか。

図2 1人あたりオフィス面積の分布

図2 1人あたりオフィス面積の分布(2012年)

※中央値:データを小さい順にならべたときに中央に位置する値。中央値では、ちょうど半分のデータが中央より小さく、もう半分が中央値より大きい。平均値に比べ外れ値の影響を受けにくく、年収など左右非対称の分布の代表値として用いられる(左右対称の分布の場合、平均値=中央値となる)。

業種によって違う。1人あたりのオフィス面積

1人あたりのオフィス面積が約2~4坪の企業や、約7坪以上の企業があるように幅広く分散している要因として、業種による違いが大きいと考えられます。今回の調査からテナントを業種別に比較したものが、図3です。

「金融業・保険業」や「学術研究、専門・技術サービス業」は、それぞれ4.36坪、4.41坪と比較的広い傾向にあることが分かります。こういった業種の企業では、業務の都合上、顧客や取引先がオフィスを訪れた際の印象を重視し、エントランスや応接室をゆったりとしたレイアウトにすることが多いことなどが、広い結果となった理由と考えられます。
また同じく4坪よりも広い業種として「製造業」があります。この業種は、製品や原材料の保管場所等のスペースが必要となるため、1人あたりのオフィス面積が広くなる傾向にあるようです。

一方、4坪より狭い企業が多い業種は「情報通信業」で、3.36坪です。「金融業・保険業」「学術研究、専門・技術サービス業」とは1坪以上も開きがあり、約2畳分ものスペースの違いが出ているのです。この業種では業務の効率化が進み、デスクや資料、商品などが省スペース化されているため、4坪より狭くなっていると考えられます。

またこういった業種では、「フリーアドレス制」をとる企業が増えていることも、オフィス面積を狭くしている要因の一つだと考えられます。個人の書類や荷物はロッカーに収納して自分のデスクを持たないことで、1人あたりの省スペース化を実現しているのです。

図3 業種別の1人あたりオフィス面積の比較

図3 業種別の1人あたりオフィス面積の比較(2012年、東京23区)

まとめ

オフィススペースを拡張・縮小したいと思ったら、まずは自社の1人あたりのオフィス面積が実際にどの程度なのかを調べてみてはいかがでしょうか。今のオフィスが「狭すぎる!」「広すぎる!」というのはレイアウトによって感覚値が大きく変わります。感覚値ではなく、客観的な数字をもって比較することで、スペースを有効利用できているかどうかの重要な判断材料となるはずです。