社員の通勤手段を把握していますか?
~新しい都条例が施行されます!~

平成25年7月1日、「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が施行されます。この条例では、都、自転車利用者等に加え、事業者(企業)が負うべき義務や努力義務が定められています。

自転車通勤者への確認義務?!

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条例の施行を受け、企業は自転車通勤する従業員の駐輪場所を確保するか、従業員が駐輪場所を確保していることを確認しなければなりません。上記漫画の担当者は、対象となっている従業員に対して駐輪場を利用しているかの確認を行いましたが、どうやら確認漏れがあったようです。
今回は、この条例の中で企業にどのような取り組みが求められているのかをご紹介します。意外な落とし穴がありますので、しっかり確認しておきましょう。

条例が制定された背景

近年、通勤手段として自転車を利用する人が増えています。
健康志向の高まりや、豊洲や品川などの都心部へ自転車通勤可能な湾岸エリアに大規模なマンションが数多く建設されたこと、また、東日本大震災時の帰宅困難な状況を受け、電車や地下鉄などに代替する移動手段として自転車を利用する人が増えたことなどがその理由だと考えられます。

しかし一方で、自転車に関連した交通事故や放置自転車の数が急増し社会問題となっています。そこで、自転車の安全で適正な利用を促進するためにこの条例が制定されました。


企業が把握すべき条例のポイント

では、この条例の中で、特に企業に求められている点を確認していきましょう。

対象

就業規則等で自転車通勤を禁止していない全ての企業
(※ただし、通勤手段を公共交通機関に限定している場合は対象外)

義務内容

従業員による放置自転車の防止及び自転車の安全な利用は企業の責任となります。 自転車通勤をする従業員がいる企業に対して、次の義務(1.)、努力義務(2.)が定められています。

  1. 自転車通勤をする従業員のために企業が駐輪場所を確保する(以下「確保」といいます)か、その従業員が駐輪場所を確保していることを従業員に書面にて確認する(以下「確保の確認」といいます)こと。
  2. 自転車通勤をする従業員に対して、自転車の安全利用のための研修や情報提供を行うこと。

意外な落とし穴!

会社まで自転車通勤をする場合だけではなく、自宅から最寄り駅まで利用する場合や、会社の最寄り駅から会社まで利用する場合など、通勤途中の一部分で自転車を利用している場合も、駐輪場所の確保または確保の確認の対象となるので注意が必要です。(ただし、いずれも東京都区域内における駐輪に限られます)

注意点
  • 自転車で事務所やお店を訪問する顧客に対しても、駐輪が適正に行われるよう、駐輪場所の確保か、近くの駐輪場所の案内等に努めなければなりません。
  • 「自転車を仕事で使用する企業」については、別途様々な努力義務が規定されておりますのでご注意下さい。

例えばどのような場合に確保または確保の確認の義務が生じるのか、以下のチェックフローをご参照ください。

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自転車通勤ブームに伴う街の変化

この自転車通勤者の増加に伴い、自治体や民間企業により駐輪場の設置が進み街も変化してきており、具体的に次のような動きがみられます。

千代田区

2011年に東京駅の放置自転車の数が都内ワースト2となったこと受け、東京駅付近に駐輪場が新設されました。現在は無料駐輪場を設置し、放置自転車数が減少するか検証を進め東京の玄関口である東京駅周辺の道路環境改善に取り組んでいます。

港区

六本木に大型駐輪場(600台分)を整備し、放置自転車の解消及び道路環境の改善に取り組んでいます。整備中は暫定的な駐輪場が設置される見込みです。

品川区

大井町駅の駐輪場を約2倍の規模に増設を予定しています。
その他、地上では新たに駐輪場を設置する土地がないため、地下や暫定的に駐輪場として利用できる場所の増設を進める予定です。

自治体独自での駐輪場設置は、駐輪場用地が取得できず難航しています。そのため、民営の駐輪場を紹介したり、民間企業に駐輪場整備の協力要請を行うなど、民間企業との連携を進めているようです。
一方、シャワールームやロッカールームが併設された駐輪場の設置や、ビルの屋上への設置、駐車場として利用していた区画を駐輪場に変更するなど、民間企業による駐輪場増設も進んでおり、これらが増加する放置自転車対策にもつながると予想されます。

まずは、就業規則・通勤手段の確認から!

今回施行される条例では、就業規則等で自転車通勤を禁止していない企業で、自転車通勤する従業員がいる企業が義務の対象となります。自転車通勤とは、自宅から最寄り駅までなど通勤の途中に自転車を利用している場合も該当します。そのため、多くの企業が該当する可能性があります。まずは就業規則の確認・従業員の通勤手段の確認から始めましょう。

参考:東京都青少年・治安対策本部 自転車安全利用条例