「重要事項説明」って何が重要?

賃貸でも売買でも、いざ契約を結ぶ瞬間というのは緊張しますよね。その前にしっかり押さえておきたいのが、重要事項説明。書面に記載されている物件の説明項目を宅地建物取引業者(宅建業者)が朗々と読み上げるのを、大事そうだけど何を言っているのかわからないまま聞き流しているという人も実は多いのではないでしょうか。契約とは違うの?どんな内容があの中に含まれているの?今回は、何となく聞いたことはあるけれど、あまり馴染みのない重要事項説明に関する疑問にお答えします。

そもそも重要事項説明って何?

「きちんと綺麗に使用していたのに、原状回復費用を請求された・・・」
「今のオフィスを退去する際に返ってくる敷金を、新しく入居するオフィスの敷金にしようと思っていたのに、返ってくるのは契約が終了した何ヶ月も後だった」

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貸主と借主をめぐる不動産トラブルは様々ですが、その原因を辿ると、多くが契約時に契約内容を十分に認識していないことによるものです。オフィスの移転は頻繁にある訳ではないですし、不動産の取引は専門用語が多くなかなか理解するのが難しいものですよね。そこで行われるのが重要事項説明です。

借主がきちんと内容を理解してから契約ができるように、不動産のプロである宅建業者が借主に対して、「どんな建物をどんな条件で借りる契約を締結しようとしているのか」契約前に事前に説明するものです。宅建業者は、宅地建物取引主任者(俗に言う「宅建」の資格登録者)に、借主に対して書面を交付して口頭で重要事項説明を行わせる義務があります。契約後のトラブルから借主を守るため、必ず契約の前に実施されます。

「重要事項」ってどんなこと?

重要事項説明とは、文字通り契約に関する「重要」な「項目」についてその内容を「説明」することです。では、具体的にはどのようなことが説明されるのでしょうか。建物賃貸借の際の重要事項説明では、たとえば以下のような項目が説明されます。

建物に関する項目
  • 契約する物件、貸主について
  • 登記簿に記録された事項
  • 法令に基づく制限等の概要
  • 水・電気・ガスの供給施設、建物設備等の整備状況
  • アスベスト使用調査の内容
  • 耐震診断の内容
  • 建物の工事完了時の形状(完成物件の場合は省略)
  • 管理の委託先

契約の条件
  • 契約の種類、期間
  • 契約の更新について
  • 契約の解除条項
  • 賃料以外のその他経費について
  • 賃料
  • 解約予告について
  • 損害賠償や違約金に関する事項
  • 原状回復義務について

後で「知らなかった!」なんてことはないようにしておきたいですね。
次に、どんな点に注意して説明を受ければ良いのか、特に大事なポイントをご紹介します。

ここは要注意!重要事項説明の押さえておきたいポイント

不動産トラブルで多いのが、金銭面や設備面でのトラブル。中には、想定外の出費を強いられたり、健康や安全を脅かしかねないものもありますので、次の項目については特に注意してチェックするようにしましょう。

登記簿に記録された項目の説明

重要事項説明書をよくチェックすると、所有者と貸主が別人というケースがあります。夫婦や親子といった場合もあれば、所有者から委託された管理会社や不動産会社が貸主という場合もあり、両者の関係は様々です。
また、抵当権など所有権以外の権利についても記載されています。

抵当権は多くの物件に設定されています。もしも賃貸借開始後に貸主が倒産し抵当権が実行された場合、借主は貸室から退去しなければならない場合があります。
詳しくお知りになりたい方は下記の記事をご確認下さい。

もしも入居しているオフィスビルのオーナーが倒産したら・・・?
預けている敷金の行方はどうなるのか??

アスベスト調査の説明

平成18年から説明を義務づけられたのが、建物におけるアスベスト(石綿)の使用調査結果の記録の有無です。こちらは調査をしたかどうかの記載であり、アスベストの使用有無の記載ではありません。そのため、調査が実施された場合はその内容が説明されますが、調査自体は任意ですので、中には「調査していない」と記載されているケースも。現在はアスベストの使用は全面禁止されているため、ここ数年に新築された物件では心配は少ないですが、古い建物の場合には、注意が必要です。

耐震診断の説明

こちらも平成18年から新たに追加された項目で、昭和56年6月1日より前に新築された建物の場合に重要事項の説明対象となります。指定確認機関などによる耐震診断の記録の有無と、診断記録がある場合はその内容が説明されることとなっています。

契約の条件の説明

たとえば冒頭でも述べたように、原状回復義務の内容や敷金の返還時期、解約予告の期間や通知の仕方など、契約の条件は必ず納得の行くまで説明を聞き理解するようにしましょう。違約金などが発生する場合もありますので、ここを押さえておかないと思わぬ大失敗に繋がりかねません。見落としは禁物です。


意外と知らない!重要事項説明の秘密

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借主が十分に条件を理解した上で契約を結ぶために欠かせない重要事項説明。
下記のポイントは意外に勘違いされている方も多いようです。

  • 宅地建物取引業法に説明義務が明記されていますが、この義務の対象となるのは取引の窓口となる宅地建物取引業者であって、借主に説明を受ける義務はありません。
  • 重要事項説明を受けた場合、その後当然に契約を締結するものと思われがちですが、重要事項説明は必ず契約の前に行わるもので、契約とは別物です。
  • 仲介業者を通さずに貸主が借主と賃貸契約を結ぶ場合、宅地建物取引業法上の取引にはあたらないので、この場合貸主に重要事項説明を行う義務はありません。契約内容で不明な点があれば、必ず貸主に確認しましょう。

重要事項説明をしっかり確認して、納得のいく契約を

いい物件を見つけたら、つい慌てて契約をすませてしまいそうになりますが、そんな時こそ落ち着いて情報を確認することが大切です。
びっしりと文字が敷きつめられた重要事項説明書を見ると、それだけで身構えてしまいますが、今回ご紹介したように記載項目はあらかじめ決められています。事前にどんな項目があるのか把握しておくだけで、説明もぐっとわかりやすくなるので、上記で挙げたポイントを含め、事前に簡単に内容をチェックしておくといいかもしれません。
もしも気になることやわからないことがあれば、気後れせず必ず質問することが大事です。入居後のトラブルを避けるためにも、契約内容をきちんと理解できるまで説明を受けましょう。