会社のデータ本当に守れていますか?
「データセンター」を正しく理解して賢く使おう!

東日本大震災の後、BCPの策定や見直しが各企業で進んでいます。事業を継続させるためには、社員と共にデータやシステムを守る必要があります。これは企業の規模や業種に関わらずどの企業にも共通して言えることです。そこでニーズが高まっているのがデータセンター。
その一方で、「データセンターの事がよく分からない」、「何を基準に選べばよいか分からない」「ウチには時期尚早では」などの理由で利用に踏み切れない企業も多いようです。

そこで今回は、「とっても判りやすいデータセンターのいろは」と、「ある企業のデータセンター活用事例」をご紹介します。

そもそもデータセンターってなぜ必要なの?

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データセンター(以下DC)は、以前は一部の大企業や、インターネット上で取引を行う企業などに利用が限られていましたが、今やどの企業でも大量のデータを扱いますし、そのデータを扱うシステムなしで業務を継続することは難しくなっているため、DCの利用は業種や規模を問わず広まっています。
企業のデータや業務の中心となるシステムが全て消えてしまったら・・・言わば企業全体が記憶喪失になった様なものです。ただ、広まってきたとは言え、社内にサーバを置いている企業がまだまだ多いのも現実。では、社内に置いていることで生じるリスクにはどんなものがあるのでしょうか?

  • ビルの年次点検時のサーバ停止によるデータ消失(多くのビルは法定点検のため年1回は停電がある。また停電にはならなくても、電圧が不安定になることが少なくない)
  • 災害発生時の停電や計画停電、地震の衝撃や漏水、水害などによるサーバの倒壊・故障
  • 急激な温度変化(サーバは熱に弱い)による故障
  • サーバルームのセキュリティ強化のための設備投資・管理運営のわずらわしさ

このように社内に置いておくことは、さまざまなリスク要因をはらんでいるのです。これらの危険からサーバを守る専用施設、それがDCです。

データセンターの内部はこうなっている!!

では、DCの中はどうなっているのか?実際に都内某所にあるDCを見学しました。外観は病院の様な工場の様な、外からではDCとは分かりません。
まず、驚いたのはセキュリティの厚さです。敷地への入口に始まり、空港の入国審査かの様な受付、ICカードや生体認証など、サーバルームへ到達するまでに8つの様々なセキュリティがありました。
サーバルーム内にも、サーバを守るための様々な工夫があります。多数の防犯カメラで監視し、サーバを置く各ラックにICカードキー、そして火災発生時には消火をしつつも故障を防ぐために、スプリンクラーではなくガスの消火設備がついています。

その他にも建物全体が免震構造になっていたり、サーバルーム内は免震床が設置されていたり、震災や災害対策が整っています。複数の変電所から電源の供給を受けているため、停電のリスクは低いですが、万が一停電になっても、UPS(無停電電源装置)や非常用発電機を設置しているため、サーバを停止させることなく常に稼動させることができるのです。

いろいろあるデータセンターのサービス

DCが提供するサービスやサポート体制も充実しています。代表的なものとして「ハウジングサービス」と「ホスティングサービス」の2つがあります。

ハウジングサービス

サーバを置くスペース、電源などのファシリティ、ネットワークを借りること。サーバは利用する企業側で用意します。マンションで言えば部屋を借りて家具など生活に必要なものは借りる側が揃えるタイプです。サーバ管理を自社で行うため設定や運用に自由度がありますが、ある程度スキルを持った人材が必要となります。

ホスティングサービス

ハウジングサービスに加えて、サーバも借りること。自社で機材の購入や設定をせずに、利用が始められます。マンションで言えば家具も食器も揃った環境を借りて、すぐに生活をはじめるタイプです。
メリットは、利用を開始するまでにかかる負担を軽減でき、サーバ管理のスキルを持った人材が必ずしも必要でない点ですが、ホスティングサービスの会社への指示などやり取りができる程度の知識は必要となります。

その他、機器や設備の監視や運用・管理のサービスも豊富に提供されているので、企業規模に関わらず自社のニーズに応じたサービスを選ぶことができます。自社には何が必要なのか、整理し利用するサービスを選択しましょう。
DC=大企業が利用するもの、というイメージがあるかもしれませんが、次の事例では社員数が3名だったころからDCを利用してきた企業をご紹介します。

事例:データセンター導入・移設に伴うアレコレとは?~DC変遷記~

20年ほど前、マンションの一室で機械部品の販売という事業をスタートさせたK社の事例を見てみましょう。

デスクトップPCをサーバ代わりで管理していたころ

機械部品販売業のK社は、20年ほど前にマンションの一室から事業をスタートしました。
K社は社長も含めて3人でスタートした小規模な会社で、伝票は全て手書き、発注や見積もりはFaxを使っていました。事業を始めて3年目に入るころ、扱っていた機械部品が大ヒット。以降、右肩上がりの成長を続け、そのお陰で毎月のように社員を増やし、オフィス移転を繰り返していました。

一方、データ量は大して多くなかったので、デスクトップPCをサーバとして利用し続けていました。当時は停電すればサーバはダウンし、その時社員がいなければ数時間もダウンしたまま、翌朝気がついた社員が再起動してもデータが一部消失している、ということが度々起こっていて、「このままでは、大切なデータがなくなってしまうかもしれない・・・」と不安になったK社は、電源確保はもちろん、セキュリティ対策の面からもデータセンター(DC)利用の検討を始めました。

初めての利用も、数年で移設。データセンター難民だった頃

「どのDCにするか・・・」担当者はあちらこちらから資料をかき集め、DCの営業の話を聞きました。とにかく電源確保ができて、絶対に止まらないことが第一条件でした。その結果、会社から近い距離にあった小規模なDCを借りることを決めました。初めての試みの上、システムに詳しい担当者がいなかったこともあり、サーバやネットワーク機器の購入が発生しないホスティングサービスを選択しました。

K社の事業はその後も拡大し、取扱い製品や仕入先も増加。それに比例して販売管理や在庫などのデータ量も大幅に増えました。ようやく社内に専属の情報システム部門を置くことができるようになったころ、エンジニアから「自由度が高い独自サーバでの運用を行いたい」という希望が強くなったのです。
サーバ管理ができるスキルを持った人材もいたので、このタイミングでサーバラックとネットワークだけを借りてサーバなどの機材を持ち込むハウジングサービスに切り替えたK社。各営業拠点を結ぶネットワークや共有ファイルサーバ、グループウェア、そしてカタログを閲覧できるWebや、顧客へのメールマガジンなどに対応しようと考えるとサーバのOSやミドルウェアなども自由に選択し、独自の設定をしたいというのがエンジニアの希望でした。

もう一つの課題は、セキュリティ対策でした。社内の機密情報を置くことを想定していたこともあり、外部からのアクセスを防ぐ堅牢な環境にあることも、選定の必須条件だったのです。
そこで、K社は当時セキュリティ対策では日本屈指と言われていたDCを採用しました。そのDCは、自社から電車を乗り継ぎ1時間以上かかる距離にあったため、サーバが止まるなどの緊急時対応にも時間がかかってしまった上に、会社とDCを行き来するはめになった情報システム担当者も疲弊し・・・。次第にそのDCを利用することへの疑問の声もあがりはじめました。

そこで、コストは割高になるけれども自社から30分圏内のDCへ移ることを決めました。

時代の流れに合わせて、常に最先端のデータセンターを

安定運用をしていたK社。しかし震災以降、近くのDCだけに置いていても、大規模災害が発生したときには大切なデータを守れないという事実を目の当たりにし、改めて検討することにしました。
電源供給能力、建物の免震対策だけではなく、遠隔地バックアップをとり、万が一の事態に備える方法を模索したのです。

賢く使って企業を守ろう!

企業の生命線とも言えるデータやシステムを守るDC。
自社で企業のデータやシステムを守るためには、サーバを管理する環境・人・体制など様々な策を講じる必要があり、それぞれのリスクがありますが、専門施設のDCを利用することでそのリスクを減らせることが利用する一番のメリットと言えるでしょう。

一方で、「費用が高い」というイメージがあるかもしれませんが、利用の仕方によってはコストを抑えることもできます。社内で使用しているシステム全てをDCへ預けるのではなく、常に稼動が必要な重要度の高いもの、例えば業務やサービスの中核となる重要なシステムはDCへ預け、その他は自社に置いておくなど、重要度に応じてDCに預けるもの、社内に置いておいても良いものを選別し利用しましょう。自社に合った形で賢く利用し、万が一に備えておきましょう。