虎ノ門の歴史と未来に想いを馳せるコラム

歴史と進化が融合する都市「虎ノ門」の発展

文 : 釜井 知典

今、虎ノ門が注目を集める理由

終戦からわずか19年後に開催された、1964年の東京オリンピック。首都高速や東京モノレールといった交通インフラ整備が次々と進み、日本の復興と経済発展の“起爆剤”となりました。2020年の東京オリンピック開催決定にも、同様の理由から胸を熱くした人も多いのではないでしょうか。そんな日本各地の期待が高まるなかで、話題を呼んでいるのが港区「虎ノ門」です。

そのきっかけとなったのが、2014年に誕生した都内第2位の高さを誇る高層ビル「虎ノ門ヒルズ」。竣工当初は東京の新たなランドマークとして注目され、古くからのビジネス街である虎ノ門にハイクオリティな賃貸オフィスができたと、脚光を浴びていました。

実は、虎ノ門ヒルズが誕生するまでの虎ノ門は、レトロな貸店舗や賃貸オフィスなど古い不動産が集まる場所でした。しかし、2014年以降はこれまでの空気を一変させ、国際競争力の高い街へと少しずつ変化しています。

虎ノ門でこういった再開発が行われる背景には、官公庁や大使館といった施設が近いロケーションにあるといえます。こういった背景から外資系企業に人気の町で、虎ノ門で再開発の指揮を執る森ビルはこのロケーションを活かし、虎ノ門を“世界との懸け橋”に変えようとさまざまな行動を起こしているのです。

環状二号線と「虎ノ門ヒルズ」

虎ノ門ヒルズは、近年開通した環状二号線上に建てられたことでも話題となった賃貸オフィスです。ビル内を道路が貫通しているといった事実はもちろん、総貸室面積30,000坪のハイスペックオフィスにも、誰もが目を丸くしたことでしょう。

そんな虎ノ門ヒルズ周辺では、今も大規模な再開発が継続されています。

現在建設が進められているのが、2019年12月竣工予定の「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」、翌年4月竣工を予定している「虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」の2棟。そして、2022年竣工目標の「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」です。

ビジネスタワーは賃貸オフィスと商業施設から構成される、36階建ての事務所棟で、虎ノ門に新設される予定の日比谷線虎ノ門駅や既存の銀座線虎ノ門駅との連結も行われます。1階には都心と臨海部を結ぶBRT(バス高速輸送システム)や、羽田空港へ向かうリムジンバスなどが発着するバスターミナルを設置。これにより、東京の玄関口としての機能を虎ノ門にもたらしてくれます。また、企業間の交流拠点となるイノベーションセンターやサロン、イベント会場を設け、新たなビジネスの場を創設します。「ビジネスタワー」の翌年竣工予定となっている「レジデンシャルタワー」は、54階建ての住居を中心とした高層ビルで、森ビルの高級住宅ブランドシリーズ最高峰といわれています。

「ステーションタワー」は、名前からわかる通り虎ノ門に新設される駅と一体的に開発されている施設です。虎ノ門ヒルズと同規模のオフィスやホテルを融合させたタワーの建設が検討されており、今後どういった物件が作られるのか非常に楽しみです。

さらに、虎ノ門一・二丁目地区再開発では、虎ノ門ヒルズ同様に森ビルが指揮を執る再開発が行われる予定で、国際水準の賃貸オフィスやホテル、商業施設などが設けられます。それぞれ街区は異なりますが、その垣根を越えて新駅と一体となった交通結束空間や歩行者ネットワークが整備されるということで、虎ノ門駅周辺では今後の利便性向上にも期待が集まります。

国際都市への足掛かりとなる「虎ノ門二丁目地区」

ヒルズ周辺と同様に、再開発が進められているのが虎ノ門二丁目地区です。

国際競争力強化のために「都市再生緊急整備地域」に指定された虎ノ門は、グローバルレベルで人を呼び込む力を持つ町の形成が望まれており、迅速かつ重点的な市街地整備の必要性に迫られています。

その足掛かりとなるのが、虎ノ門二丁目地区の再開発です。これには、老朽化した虎の門病院や国立印刷所などの更新と、港区で働く外国人ビジネスマンやその家族へのサポート機能の整備などが含まれています。

それと同時に、国際水準の医療サービスを提供できる場所の創設や、防災機能を備えた街づくりなども行われており、より安全で快適なエリアとなることは間違いありません。病院の横には事務所棟が建設される予定であり、それぞれ竣工は2019年、2024年となっています。

国際力豊かな街を導く「虎ノ門・麻布台地区」

一方、虎ノ門・麻布台地区では、外国人にとっても暮らしやすい環境を目指し、国際教育施設や外国人の生活支援・交流施設、多様なニーズに対応し得る居住空間の創設などが行われています。

街区はA~Cに分かれ、インターナショナルスクールや多言語対応子育て施設、マンション、サービスアパートメントなどが建設される予定です。C街区には店舗・賃貸オフィス・寺院などの計4棟が建設され、周辺エリアとの連結を図るため歩行者ネットワークの整備や地形を生かした緑地形成なども盛り込まれています。

サービスアパートメントとは、ホテルと賃貸住宅の中間的な存在で、家具・家電付きの部屋に滞在でき、コンシェルジュサービスやハウスキーピングなどのサービスが受けられる充実した施設です。仕事のため長期間滞在する外国人家族にとってもうれしい施設といえ、虎ノ門の国際力をさらに高めてくれることでしょう。

各街区は2022年完成を目途に進められており、東京オリンピック開催後の虎ノ門の活躍にも期待が集まります。

虎ノ門の進化に注目!

かつて行われた東京オリンピックでは、交通・社会インフラの整備が急ピッチで進められ、国全体が活気づく様子は映画でも描かれています。現在の日本は戦後と比較すると豊かな国になりましたが、国際競争力の低下はGDPを見ても明らかです。このような日本に活気をもたらしてくれる契機となりえるのが、虎ノ門の再開発。虎ノ門では、ロケーションを活かしつつ新しい風を呼び込む、温故知新の再開発が行われています。惜しまれつつも本館の建て替えを決定したホテルオークラ東京も、こういった施設のひとつとして挙げられるでしょう。

ほかにも、「虎ノ門トラストシティ ワールドゲート」や、「虎ノ門駅前地区第一種市街地再開発」など、2019~2024年にかけて虎ノ門では次々と新しい賃貸オフィスやマンション、施設が誕生していきます。

虎ノ門ヒルズ誕生後から、メディアを騒がせ続ける虎ノ門の進化に、今や世界も注目を集めています。日本人にとっても、日本で働く外国人にとってもより良い環境を与えてくれる虎ノ門は、今後“国際都市”としてその名を響かせてくれることでしょう。

※参考
https://downtownreport.net/area/toranomon/
https://www.mori.co.jp/projects/toranomonhills_business/
https://www.mori.co.jp/projects/toranomonhills_residential/
https://www.mori.co.jp/projects/toranomonhills_station/
http://www.ur-net.go.jp/toshisaisei/urbanr/pdf2/tora2.pdf
http://www.decn.co.jp/?p=93435
http://www.plazahomes.co.jp/news/toranomon-azabudai-redevelopment/
https://www.apartment.co.jp/about_apartment/index.html
https://www.nri.com/jp/opinion/it_solution/2002/pdf/IT200210z02.pdf

文 : 釜井 知典

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