港区で未来を描きたくなるコラム

港区の起業支援・税制メリットを概観しよう

文 : 浅見 直希

港区ホームページには、「中小企業・創業支援」情報として、以下の6つの項目が紹介されています。

(1)創業・ベンチャー
(2)経営支援
(3)中小企業販路拡大支援事業
(4)仕事と子育て両立支援事業
(5)商工会館
(6)港勤労福祉会館

それらの制度・施設の利用方法や、補助金・支援等の申請手順、申請書の記入方法などについては、「港区産業観光ネットワーク・MINATOあらかると」に詳しいので、実際に手続きを行う段には、ぜひしっかりとそちらのページをご確認頂ければと思います。

さて、今回の「港区コラム」では、その内の、「(1)創業・ベンチャー」に対する起業支援(企業支援)・税制メリットに絞って、お話ししていきたいと思います。

起業前に学んでおきたい、会社設立のメリット・デメリット

まずは、一般的に語られる会社設立の利点・難点について見ていきましょう。

いざ起業を検討する(新たに事業を立ち上げる)際に、会社(法人)を設立するか、あるいは、個人事業で開業するかは、非常に頭を悩ませるところですね。
今、この港区で新しい事業を立ち上げようと思っておられる方は、どうか、しっかりと会社設立のメリット・デメリットを理解した上で、決断を下すことをお勧めします(求めるべき賃貸オフィス物件の方向性[賃貸オフィスの規模、賃貸オフィスの設備、賃貸オフィスが位置するエリア等]も、その決断によって左右されることでしょうし)。

それでは、そもそも、「個人事業」と「法人」の法的な違いとは、一体何なのでしょうか。それは端的に言うと、以下のようになります。

・「個人事業」とは、個人が主体となって自己の責任の下に事業を行うことで、自営業とも称される。

・「法人」とは、法律上、人間以外の存在として、権利義務の主体となることを認められたもののこと。

例えば、「個人事業」において、事業のために借入れした場合、それは事業主の借入金(悪く言えば借金)になります。一方、「法人」で借り入れた場合は、その借入金は経営者の人格とは切り離された「法人格」のものとなり、経営者個人の財産から借入を返済する義務は生じません。

このように、基本的な「法人」と「個人事業」の違いを確認してもらったところで、次に、「法人(会社)」設立のメリット、デメリットを見ていきましょう。

【会社設立のメリット】

[1]社会的信頼度が高く、取引先・仕入先などから信用されやすい
フリーランスで働く人は増えてきていますが、それでもなお、法人の方がより多くの社会的信頼を勝ち得ているという、厳然たる事実があります。というわけで、取引先の幅は法人の方が拡げやすい傾向にあります。

[2]優秀な人材が集まりやすい
求職者は、個人事業よりも法人(会社)という組織の方にこそ、安心感・安定感を抱くようです。

[3]各種金融機関からの融資・資金調達を受けやすい
個人事業だと銀行等から融資を受ける際には、第三者の保証人を要求されたりします。

[4]節税対策の幅が広がる
法人だと家族や経営者自身への給与支払いが可能になるため(個人事業では原則、家族に給与は支払えません)、所得分散をして住民税、所得税を節税することができます。また、会社の所有財産には相続税がかかりません。一方で、個人事業の場合は、経営者が亡くなると、その財産は全て相続税の課税対象となります。

[5]有限責任:個人財産を守ることができる
事業に失敗して債務を抱えた場合でも、支払い義務が生じるのは法人資産の範囲内のみ。個人事業の場合は、自分の財産を切り崩してでも、すべての未払金を返済しなくてはなりません。つまり、法人の方が経営のリスクが圧倒的に少ないのです。

もちろん、デメリットもあります。

【会社設立のデメリット】

[1]起業時、事業の廃止時に費用がかかる
定款作成や設立登記に25〜30万円程の費用がかかります。また、事業の廃止時にも、最低、解散登記分3万円、清算結了登記分2万円の出費が求められます。個人事業の場合は不要です。

[2]税務処理・会計処理の複雑化
法人の場合、個人事業に比べて厳密な会計処理が求められるため、税理士、会計事務所などの税務会計スペシャリストのサポートが必須となります。当然、その分、コストは増えます。

[3]ランニングコストの増加
従業員らの社会保険(健康保険、厚生年金保険)が強制適用となり、月々のコストが増加します。

ベンチャー企業支援のための「エンジェル税制」

上で記した会社設立のメリット・デメリットを勘案した結果、あなたは、この港区で賃貸オフィスを探し、あるベンチャー企業を設立しようと決意したとします。さて、そんな時、ぜひ活用して頂きたいひとつの税制措置があります。
それが、「エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)/経済産業省」です。

天使の税制、ということで、ちょっと可愛らしく響くこの税制ですが、これは、ひと言でいうと、起業間もない中小企業を支援するための税制措置です。

立ち上げたばかりのベンチャー企業では、当然資金力も乏しく、例えば、地縁も人脈のある港区で賃貸オフィスを持ちたいな、なんて思ってみても資金的に叶わず、結果、事業の推進力が削がれてしまう、なんてこともあるでしょう。

この「エンジェル税制」では、そういった中小ベンチャーへの企業支援を目的に、ベンチャー企業へ投資を行った個人投資家(エンジェル投資家)に対して、税制上の優遇措置を行っていきます。
そして、この税制は小売業・IT企業、サービス業を含むほぼすべての業種を対象とし、創業者や役員、従業員が自身の会社に投資したケースでも適用されます。

さらに、この税制はベンチャー企業支援でもある一方で、事業への投資を通じて社会貢献を意識する「エンジェル投資家(※)」の背中も押してくれる税制でもあるんです。

 ※「エンジェル投資家」(ビジネスエンジェルとも)とは:
語源は、演劇への資金供給を行う裕福な個人。起業間もない企業への資金提供者を指します。米国の成長企業(アップル、アマゾン、グーグルなど)もエンジェル投資を受けています。日本ではソニーも創業初期に野村胡堂(「銭形平次」の原作者)よりエンジェル投資を受けています。

例えばあなたが、日本最大のビジネスエリアでもある憧れの港区で賃貸オフィスを探したいと思い、いや待て、資金調達が…と、頭を悩ましていたとします。
そんな時、ぜひ、「エンジェル税制」を思い出してください。この中小企業支援のための税制を上手に活用することができ、そして何より、あなたの事業が投資家に夢を見させるに足るものであったのならば、あなたも憧れの港区で賃貸オフィスを構え、存分に刺激的なビジネスの世界に身を投じることのできる日を迎えられるかもしれません。

起業当初ほど利用しやすい? 所得拡大促進税制

もうひとつ、起業時にぜひとも利用したい税制をご紹介します。それが「所得拡大促進税制」です(平成25年4月1日以降適用)。
この税制は、経済産業省HPによれば、下のように説明されています。
「国内雇用者に対して給与等を支給し、以下の3つの要件を満たした場合、雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができる制度です。

【要件1】雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5%以上であること
【要件2】雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること
【要件3】平均給与等支給額が比較平均給与等支給額以上であること」

…あまりピンときませんね。
簡単に言えば、この税制は、雇用者1人当たりの給与所得を向上させようとする目的で制定されたものだということです。つまり、給与所得水準を回復させて消費拡大を促し景気回復を図る国の政策なのですが、その一方で、この税制には、ベンチャー企業や中小企業に追い風をもたらすという側面もあるのです。

給与がアップすれば、誰だって嬉しいですよね。
この「所得拡大促進税制」は、上の3つの要件を満たせば(「役員の親族等、特殊関係者を除く」などの例外あり)、企業が従業員の給与を増額した際に、その増額分に関して10%の税額控除(法人税額10%を限度)を認めるというものです。
つまり、給与増額に伴って企業側にのしかかってくる法人税の負担が、10%を限度に緩和されるということ。これが中小企業に至っては、税額控除の上限が20%にまで引き上げられるのです。

さらに、「所得拡大促進税制」では、起業して間もない企業には追加で優遇措置が認められています。
上に記した【要件1】は、「税制措置を受ける年度のお給料(A)が、基準事業年度のお給料(B)と比べて5%以上増加していること」という条件なのですが、この税制が開始する平成25年4月1日以降に新規で事業を開始した企業の場合では、(B)の額が×70%で算出されるため、(A)が(B)と比べて全く増額されていなくても、計算上では30%も給与を増額したと見なされるのです。
要するに、給与をアップしなくても、【要件1】はクリアしてしまえる(クリアしやすくなる)、というわけです。

このように、新たに起業したベンチャー企業・中小企業の背中を押す「所得拡大促進税制」。現在は、経済産業省からの発表しかなく、国税庁からの正式通達はまだないようなので、確かなことは言えませんが、それでも利用したくなる制度ですね。

今回の「港区コラム」では、港区に限らず全国に適用される諸制度についてご説明してきました。しかし、もちろん港区に憧れの港区に賃貸オフィスを、と思っている方にとっても、有益な情報だったのではないかなと思います。
この「港区コラム」の冒頭に紹介した、港区の「中小企業・創業支援」情報に加え、ぜひ国の各種税制情報にもアンテナを張ってみてください。より多くの税制メリットを受け、どうかこの港区でお気に入りの賃貸オフィスに巡り合って下さいね。

文 : 浅見 直希

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