品川駅周辺を誇りに感じるコラム

大手IT企業の本社が集まる街・品川

文 : Sayo

一日の駅利用者数が東日本トップ5に入るほどのビッグターミナル駅、品川。
実は、品川駅がある港区・また隣の品川区は、IT企業本社が全国で最も集結しているエリアになります。特に、港区の六本木や赤坂・虎ノ門、品川区の五反田・大崎にIT企業が数多く集中しています。そんな中でも、大手企業の本社や本部が多くオフィスを構えている品川も、近年IT企業のオフィス移転先として注目を集めているのです。それでは、なぜIT企業の移転先として注目されているのか、品川の歴史を振り返り、その理由を紐解いていこうと思います。

港街・宿場町として栄えた品川

海に面している品川に人々が暮らし始めたのは6,000~7,000年前の縄文時代早期。考古学発祥の地として全国に知られるようになった大森貝塚をはじめとして、多くの遺跡が発掘されています。奈良・平安時代には、すでに京都と国府の中継地点として交通の拠点となっていたそうです。江戸時代には、交通量が多い東海道の第一宿場として「品川宿」が建設されました。旅人たちでにぎわい、住む人も多く、活気ある街として栄えていきました。
明治になり品川は、いち早く鉄道が敷設され、官営品川硝子製造所が設立されるなど近代工業の先がけとなりました。そして、京浜工業地帯の発祥地として、製造業を中心に発展してきました。現在も製造業の高い技術力は健在ですが、徐々にサービス業が増加してきており、品川はサービス業中心へとシフトしつつあります。またIT化が進み、IoT(モノのインターネット)が一気に普及し始めている現在、品川周辺の製造業の高い技術力を活かすべく、IT企業(情報通信業)が増えてきているのです。

品川に本社・本部を構える大手企業

かつて栄えた製造業も健在ながら、IT企業が増加している品川。それでは、実際どのような企業がオフィスを構えているのでしょうか。東証一部上場企業など、大手企業の本社・本部を中心に見てみましょう。
まず、製造業の中でも食料品では、東洋水産、ゼンショーホールディングス、ポカリスエット・カロリーメイトの大塚製薬の親会社である大塚ホールディングスなどがオフィスを構えています。
その他、ソニー、ニコンなどの精密機器業や、日立金属、三菱重工業などの鉄鋼・機械業、JXTGエネルギーの石油・石炭製品企業も品川駅周辺へオフィスを構えており、製造業だけでもさまざまな分野の企業が集結しています。
そして、これらの製造業に加えて、IT企業として日本マイクロソフト、電通国際情報サービスなどが本社を構えています。情報通信産業として品川に拠点を置いているNTTコムウェア等のNTTグループは、品川駅港南口側に多くのオフィスを構えています。2016年5月には、NTTファイナンスが2015年2月竣工の「品川シーズンテラス」へ本社移転をしています。

IT大手、日本マイクロソフトの品川移転

このように、数多くの大手企業が品川へオフィスを構える中、とりわけ話題になったことがあります。2011年2月、日本マイクロソフトが都内の複数拠点を統合した、品川への大規模移転です。日本マイクロソフトは、これまで新宿、代田橋、赤坂、初台、霞ヶ関の5ヵ所に分散していたオフィスを品川グランドセントラルタワー1ヵ所へ統合。フロア階数は19階から31階までを使用し、それまでの5ヵ所合計の28,100㎡のフロア面積の約30%増となる、36,800㎡のフロア面積に約2500人が勤務しています。
マイクロソフトは、オフィス統合の理由として「組織間の連携を強化して最新のICTの活用と合わせて社内における業務の生産性の向上、ガバナンスをさらに生かせることで企業としての成長を目指すとともに、お客様・パートナー様へのサービス向上を目指す」としました。また、日本に根付いた信頼される企業を目指して企業活動を加速し、従業員にとってもより働きやすい職場環境の構築を目指すと掲げています。

日本マイクロソフトが品川へ本社移転したワケ

それではなぜ、日本マイクロソフトは品川という地を選んだのでしょうか。
理由として挙げられることとして、一つはマイクロソフトが移転先に決定した「品川グランドセントラルタワー」のオフィス構造が、移転先へ求めていた「分離した形になる器」に合致した点です。セキュリティ観点や、より働きやすい環境を作るという点で、どうしても独立型のオフィスへの移転を叶えたかったため、同じエントランスから複数の企業が入るという構造を避けたかったのです。マイクロソフトが移転先に決定した「品川グランドセントラルタワー」は、18階までは別の企業が入居しますが、総合受付と19階以上は独立した構造になっています。
そのような物件に依った理由も大きいですが、品川という街が、1990年代から他のオフィスエリアに先駆けて再開発された地域として、最新で高機能なオフィスビルが多く、安定したICT技術を導入しやすいエリアであるという点も挙げられるのではないでしょうか。

もう一点重要な理由の一つとしては、山手線内、かつ新幹線が通っており、羽田空港と成田空港へのアクセスも良好という点です。
品川のアクセス利便性は非常に長けており、在来線(JR線・私鉄)が計5線通っていることに加えて、羽田空港へも電車で20分以内。また、2027年の開通を目指してリニア新幹線の開発も進んでいます。さらに、完成時期は未定ですが、「都心部・品川地下鉄構想」として東京メトロ南北線の品川方面への延線計画も2015年7月に発表されており、品川から都心部へのアクセスも格段に良くなる予定です。
アクセスの面で加えて言えることとして、多くのIT企業や大手電気機器メーカーなどのパートナー企業やエンドユーザーなどの関連企業が品川・川崎などの京浜地域に集中していることも挙げられます。

品川本社へ拠点を統合することで、日本マイクロソフトは1日5000回以上となっていた拠点間の移動がなくなり、生産性の向上、移動コストの削減などのメリットも創出したといいます。また、移転から1ヵ月後の2011年3月11日には、東日本大震災が発生。本社移転とともに導入したワークスタイル変革の実践によって、社員が出社しなくても働ける環境を実現してみせたといいます。先進的なオフィスとしても注目されていることがわかりますね。「マイクロソフトが日本に根づき、信頼される企業に向けた変革のためのもとになる」という言葉通り、品川本社への移転は、さまざまな効果を生み出したのです。

今後の品川の発展と企業のオフィスの動きについて

1990年代に大規模再開発が進んだ品川ですが、東京オリンピック開催の2020年に向け、東京の南の玄関口としてさらなる開発が進んでいます。
最も注目されているのは、品川―田町間に40年ぶりに誕生予定の山手線新駅一帯の開発ではないでしょうか。
新駅の開発は、約13haという大規模な駅前開発も同時に行われます。5棟のオフィス・商業複合ビルと、3棟のマンションが建設予定で、隣駅品川に更なる活気をもたらすことは間違いないでしょう。
また、品川駅舎自体も開発が予定されています。港南口では、2027年開通予定のリニア新幹線が地下に建設される予定です。また、反対側の高輪口では、京急品川駅を新たに建設予定で、交通容量の増加と、羽田空港・リニア新幹線と連動してMICE需要の増大に応えるべく、高輪口のシティホテル群とのアクセス性の向上・高機能化が図られています。
目覚ましい発展を遂げている品川から、今後も目が離せません。

文 : Sayo

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